東北大学大学院薬学研究科の秋田英万教授、千葉大学大学院薬学研究院の田中浩揮助教、同大医学薬学府博士後期課程3年生の土井瑞貴氏、および医学薬学府博士後期課程(当時)の大東昂良博士を中心とする研究グループは、治療標的として脾臓内の炎症環境に着目し、慢性炎症の改善を介してMDSCの組織間クロストークを断ち切り、二次的に抗腫瘍免疫を正常化する戦略を考案しました。本戦略では、従来のように殺細胞効果を持った抗がん剤を用いてがん細胞自身を傷害するのではなく、抗炎症薬(デキサメタゾン)をナノ粒子に搭載し脾臓に多く存在する貪食細胞を標的化します。
さらに免疫チェックポイント阻害剤と併用することで、免疫チェックポイント阻害剤単体では治療抵抗性を示すがん種に対しても、本戦略との併用により高い抗腫瘍効果を発揮できます。本戦略は抗がん剤を使用せずにがん治療を実現できるだけでなく、既存の治療法の奏効率を改善する手法としても有用であると期待されます。
本成果は2023年1月27日に Small 誌電子版に掲載されました。
【発表のポイント】
- ナノ粒子化した抗炎症薬によって抗がん剤を使用せずとも腫瘍モデルマウスの治療を実現した。
- 脾臓の炎症環境を改善することによってがんに対する免疫抑制細胞の供給を断ち切り、結果として抗腫瘍免疫を再活性化できることを発見した。
- 奏効率が問題視されている免疫チェックポイント阻害剤の治療抵抗性を克服する戦略として期待される。
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