【共同リリース】細胞内で酵素のようにヒストンを修飾する化学触媒の開発 ―疾患における酵素機能の異常に介入する新規治療法の可能性―

2023.09.22

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今回、東京大学 大学院薬学系研究科 有機合成化学教室 金井 求 教授、山次 健三 助教(現 千葉大学 大学院薬学研究院 教授)、川島 茂裕 准教授らの研究グループは、細胞内にアセチル源として存在する代謝物アセチルCoAを酵素のように活性化してヒストンのアセチル化反応を促進させる、低分子化学触媒の開発に成功しました。生体内では、様々な化学反応がネットワークを形成することで生命機能の維持・制御が行われています。そのような化学反応のひとつである核内タンパク質ヒストンのアセチル化は、遺伝子の転写を制御するのに重要な反応として知られています。ヒストンアセチル化はヒストンアセチル化酵素がアセチルCoAを活性化することによって起こり、その機能異常はさまざまな疾患に関与しています。したがって、酵素に代わって生体内ヒストンアセチル化反応を促進できる人工的な化学触媒の開発は、疾患における異常なヒストンアセチル化の機能解明やその制御を介した新規治療法に繋がる可能性があります。
研究グループは、細胞内の存在量が少ないアセチルCoAからアセチル基を効率的に取り込み活性化する触媒デザインを考案し、構造改変による触媒の化学的性質の調節・最適化を行いました。この結果得られた触媒分子を生細胞に添加したところ、細胞内のアセチルCoAを用いた、ヒストンの特定の位置でのアセチル化が進行することを確認しました。
本成果は、生体内で産生される代謝物を用いた生命活動にとって意味のある生体内化学反応を、酵素に代わり低分子の化学触媒によって実現した初めての例であり、新たな基礎生物学の研究ツールや創薬基盤概念構築の第一歩となると言えます。

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